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新しい経済概念の提唱を (MSN産経ニュース)

今、人類は実は画期的な危機に瀕(ひん)しているといえるのかもしれない。それは人間の存在そのものを危うくする二重三重の致命的な障害となって迫ってきているのに、それをそのまま複合的に捉(とら)える見識が世界の指導者たちに備えられているとはとても思えない。

 一つは高度な文明がもたらしたこの地上での自然の循環の阻害による環境破壊。そしてそれに起因したともいえる物価高騰による世界インフレの到来。加えて、私たちの想像を超えた不可知に近い、しかし過去を眺めれば歴然として存在する、ある周期をおいて確実に発生してきた強力な新しい疫病蔓延(まんえん)としてのH5N1型鳥インフルエンザの到来。

 この第三の危機たる硬性強毒型の疫病は、技術と金のある国家にとってはある程度防御可能な危機ともいえるかも知れないが、それは結果として世界中に広がりつつある国家間のいちじるしい格差を無慈悲に淘汰(とうた)してしまいかねない。つまり適正なワクチンを製造し得る先進国のみが生き長らえる結果をもたらしそうだが、それをこの地球という存在を与えた、神ならぬ誰かの無慈悲な摂理として、飲みこむ訳にいきはしまい。

 この世界を限られた者たちだけで仕切ろうとするサミットなるものが、今日からこの日本で行われようとしているが、どうやらそこでの主題は三大危機の内のただ一つ環境問題に絞られるようだ。しかしこの際、今世界を襲いつつある三つの危機の他の二つ、特に環境問題にはマイナスの相乗効果をしかもたらさぬ、今日の世界の経済を支配している歪(ゆが)んだ悪しき原理についても討論されるべきに違いない。

 その元凶はアメリカが主唱する市場原理主義で、その根底にある株主至高の価値観ともいえる。先日あるテレビ番組で日本の優れた加工技術を持つ企業にアメリカのあるファンドが狙いをつけてその株の開放を持ち掛け、これを拒否した社長とのやりとりが映しだされていた。企業は株主のためにこそあるのだ、それを理解せぬあなたは常識から外れていると非難する相手に、その社長は敢然と、自分は全くそうは思わない、会社は社員のため顧客のためにこそあるのだから、そんなことをしてまでの利益を上げるつもりは毛頭ないといい返していたのが印象的だった。

 現在世界中のGDPの総額をも上回る金が世界に出回ってい、それが熾烈(しれつ)なマネーゲームを展開させ、油の価格を高騰させ、その代案として考え出されたバイオエネルギーの原料たる穀物を高騰させ、それがさらに他のもろもろの物価を上昇させひいては食糧危機をもたらし広範囲のインフレを招きつつある。

 温暖化による農業の荒廃に伴って小麦はこの一年間に2・3倍、トウモロコシは1・4倍、米も1・7倍になった。世銀によれば過去三年間の食料高騰で一億人が貧困に陥り、これは国際的な政治問題ともなって、エジプト、ベトナムカンボジアといった低所得国は米の輸出を禁止し、他の主な米の輸出国も価格調整による米の囲いこみを始めている。

 ついでにいえば、農業を補助金漬けにしてきた日本ではそのツケが回ってきて、これだけ国際価格が上がってしまっても国産の農産物はいまだに割高という状況が続いている。優良な日本製の農産物は世界でもブランド化していて、他の産物よりも高値で売れるはずなのにそれも出来ない。この食糧危機の時代なのに、政府が米の増産を口にすると猛然とした反対が族議員らから起こる体たらくだ。

 こうした悪しき経済循環を引き起こしている究極の原因は、アメリカ的価値観にのっとった熾烈(しれつ)なマネーゲームであって、過剰流動性の高まった金が世界中の各商品市場に流れこみ、そうした金の総量と全世界のGDPとの対比が示すように、経済の実態を全く反映しないいたずらに投機的なマネーゲームを展開している。その結果ごく一部の者をのぞいたほとんどの人間が不幸に晒(さら)されている。

 しかしなお、こうした経済運営の主唱者たるアメリカはその姿勢を一向に変えようとはしない。その端的な例がサブプライム問題で、会計学的にも非合理なこうした証券化商品は膨脹してつまずくと今日のような悲劇混乱を招いてしまった。

 そしてこのあまりに巨(おお)きな粗相を糊塗(こと)するために、G8では従来のルールを平然として都合よく変えようとしている。こうした姿勢が他の共感を呼ぶものでないことは自明なのに、金の量に威を借りての威圧がまかり通っているのだ。

 そうした経済行為が限られた人間への恩恵しかもたらさぬ、いい換えればアメリカの独り勝ちにしか繋(つな)がらぬ私益絶対主義が、それを通りこして世界の存亡の危機につながろうとしている今、日本における折角の世界首脳会議で、日本は他の首脳とも計りあって世界の経済に関する新しい理念と方向を提唱し、抑制の効く新しい資本主義の造形に努めるべきだ。

 さもないと我々は悪しき経済原理に引きずられるまま、人間の存在をひっくるめてこの世の全てを失うということになりかねない。

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MSN産経ニュースで見つけた、石原慎太郎市によるコラム。

私益経済主義の限界。では果たしてその代替となる新しい経済システムというのは一体何になるのだろう。友達から「新資本主義を作らなければいけないと大学教授が言っていた」とこの間聞いたけれども。2週間ほど前に参加したある講演会では、LCA代表取締役の社長が「共生主義社会の確立」について語っていて、共産主義とはまた違う側面を持っていることをしり、とても興味を持った。





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